理事長挨拶
理事長 寺田幸弘
秋田大学産婦人科の寺田幸弘です。
配偶子、受精そして生殖現象の美しさに魅入られている産婦人科教授です。
卵子は生命の無限の可能性を包含し、おいしそうに熟した大きな果実のような美しい細胞です。 当会は多彩な動物種の卵子およびその周辺の命のイベントとそのメカニズムを明らかにすることで生命科学の発展に貢献しています。
当会の大きな魅力は基礎系および臨床系の研究者が60年来胸襟を開いて参集し情報交換をしていることです。 体外受精胚移植も基礎研究者と臨床医の協力、日本での例をあげると、柳町隆造先生と鈴木雅洲先生の協力で成し遂げられています。 基礎のみでも臨床のみでもない当会のスタンスは新しいなにかを生み出す多様性を包含しています。
新型コロナウイルス感染症はまだ油断できませんが、学術の場での意見交換が実際に可能になってまいりました。 理事長を拝命するにあたりいくつかの抱負を記します。
〇卵子学の再稼働およびその向上
当会の基盤である「卵子学」をコロナの停滞から再稼働し、向上させてまいります。 卵子学会自体がspecial interest groupのような構成です。 基礎と臨床(含、培養士系の研究者)が近い距離でコラボ可能なのが当会です。 皆さまと当会ならではの卵子学の発展的展開を考えてまいります。
〇新しい力の発掘、勧奨そして登用
研究機関、医育機関の生殖系の人材減少に歯止めがかからず憂慮すべき状況と認識しています。 これほど興味深い学問領域はなく残念なことです。 興味とやる気をもった人材に卵子学の門をたたくことを勧奨し、深く入っていただき、それらの人材を躊躇なく登用してまいります。
〇学会基盤の充実
当会員の背景は多岐にわたり、その総数は2500余の大きな組織になっています。 しかし、本質的基盤は会員数に準ずる状況ではないと考えております。 それぞれが会員の務めをはたし、かつ会員としての福利を受けるための学会基盤の再検証、再構築が必要であると考えております。
〇胚培養士認定について
私は長期間当会の胚培養士認定委員会のキャビネットを務めてまいりました。 生殖補助技術が保険収載になった現在、胚培養士はARTの重要な人材として認識されつつあります。 当会は質が担保された堅実、厳粛な学会認定を今後とも継続してまいります。